息子の高校野球が終わり、10年間の私の「野球母さん」生活も終わった。6時学校集合の時は3時半に起きてお弁当を作ったり、遅くに泥まみれのユニフォームを洗濯したり。野球母さんと仕事との両立は本当に大変で、振り返るとよく頑張ったな!と息子に対しても思うし、自分に対しても思う。
そして、その時間は頑張る息子を応援できる、かけがえのない楽しく充実した時間でもあった。高校野球が一段落して、手に取ったのは大好きな東野圭吾さんの「魔球」。高校野球の青春の話と思いきや、その内容は野球を楽しむ少年の姿が生き生きを描かれているものではなく、もっと深い、生きる場所を見出すために野球が必要だった少年の、孤独で力強く、悲しい物語が描かれていた。
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ストーリー
開陽野球部主将のである北岡が、愛犬と共に殺された。その試合で須田が投げたという「魔球」がキーワードとして浮かび上がってくる。東野青春ミステリーの代表作。
N子が最初に想像していたストーリーとは随分違う小説だった。時代背景はN子の想像では戦後20年ほどの高度経済成長期。経済が成長する中でも戦争の傷跡の残る日本を感じさせる空気感があるお話。また、高校野球という響きだけは華々しい世界を舞台にしていると思いきや、主人公須田の孤独と幼少期のトラウマからなる心の歪みが描かれており、そんな彼が懸命に大切なものを守ろうとする。須田少年の心の動きが悲しくも鮮明に描かれている作品。
「魔球」の印象
読み初めはなんだか気が重くなりそうだったけど、孤高の天才ピッチャーである主人公の須田の姿に心を奪われ、気がつけば一気に読み進める事ができた。タイトルである「魔球」の印象が、読む前と読んだ後でがらりと変わって、「魔球」に人生を賭け、すがりついた人々の生き様が、じわりじわりと心を締め付ける。
こんなミステリーは東野作品だけ!
はっきり言って、ミステリーを読み終わって「解決!スッキリした!」以外の感想を持ったのは、この作品が初めてだった。
この作品を読み終わったあとの感想は、主人公がそこまでして守りたったものを知り「胸が苦しくなった」だった。読み進めていくうちに、胸が苦しくなるのに、読む手を止める事ができない。それほどまでに、のめりこんで心が締め付けられ、心に大きなダメージを受ける。なのにもう一度読みたくなる。「魔球」は、東野圭吾ファンならずとも手に取っていただきたい一冊です。